山形さくら町病院/かみのやま病院 広報誌
認知症とは、脳の病気や障害により、正常な老化を超えた知的機能の低下を示し、社会生活に支障をきたすことを言います。記憶の障害、見当識(時間や場所を正しく認識する能力)の障害、判断力の障害、実行機能(物事の段取りを考えて行動する能力)の障害、自発性や意欲の低下などなど、さまざまな症状が現れてきます。
生活上に変化が生じ、困った行動となってしまうことがあります。そうした時にどのように接したらよいのか、いくつかの例を挙げて考えてみたいと思います。あわてず冷静に観察し、-人一人のそれまでの習慣や性格に配慮しながら、対応を考え実行しましょう。
過去と現在を混同して「今の状況」を適切にとらえられず「(昔の)場所探し」をしている場合も多いようです。本人には理由があるわけですから、無理に引きとめられると興奮することもあります。理由がわかれば、それに応じた対応を考えてみましょう。
話題を変えたりお茶に誘ったりして気分を変えること一つの方法です。一緒に出かけ近所を一回りしてみるのも効果があります。また、徘徊が目立つ時は、近所の人や交番、よく行く商店などに状況を知らせておく、衣服に名前や連結先を付けておくなども大切です。
物盗られ妄想も現れやすく、身近な介護者や家族を不愉快にします。大切にしている通帳や財布、眼鏡やアクセサリーなどを置いた場所を思い出せなかったり、忘れたことを自覚できないために、誰かに盗まれたと疑う訳です。
否定したり説得しようとするとかえって不信の念を強めます。「物がない」という事実を受け止めて一緒に探します。一緒に探し、本人が見つけられるように誘導しましょう。
普段から本人の行動を観察し、大切な物をしまう場所や立ち寄る場所を知っていると、探す場所の検討もつけやすく介護者のせいにされずに済むこともあります。
何らかの理由があり、不快の表現でもあるわけです。原因によって対応も異なりますが、攻撃的な行動は、抑えつけるよりも、攻撃的になるそのエネルギーを他の方向に向けるように援助するとよいでしょう。
原因をさぐって取り除くあるいは改善することができればそれでよいのですが、原因が思い当たらない時や介護者の手に負えない時は、精神科に相談しましょう。場合によっては薬での治療が必要です。
介護に対して拒否的になっている時は、介護を受ける側と介護する側の思いに食い違いがあることを考えましょう。思いがかなうと拒否はなくなっていきます。
拒食(食事を食べない)では、心身の状態をよく観察します。義歯が合わない、口内炎や舌の荒れ、歯肉炎、あるいは食べることを忘れてしまった、他のことに心を奪われている、精神的ストレス、うつ状態、発熱や便秘などさまざまな原因によることが多いのです。
食事の形態を工夫する、介助の方法を変える(時間をずらす、介助する人を変える、一時的に高カロリー食にするなど)を試みましょう。
拒食が続くと脱水になったり栄養状態が悪くなり体力の低下につながります。いつもと様子が違ったり、拒食の原因がはっきりしない時は病院を受診しましょう。
入浴拒否も理由を探ってみましょう。風呂は夜入るものだと思っている人には「温泉に入りましょう」とか、脱いだ服がなくなると心配な人には、かごやビニール袋を準備し見える所に置きます。誘う人が変わるのも効果があります。
病院の受診拒否もみられます。病気だと自覚がない人に受診を勧めるのは難しいことですが、何か理由を付け納得してもらいます。かかりつけ医から「専門医で検査を受けるように」と紹介状を持たせてもらう、身近な人の受診に合わせて誘う、風邪やけがでの受診など、上手に利用したいものです。早めの受診は、安心して生活することにつながり、病気の予防にも役立つことなどを伝えてみましょう。
認知症デイケアセンターあららぎの里 看護師 庄司 ミサヲ