山形さくら町病院/かみのやま病院 広報誌
現在、成人の5人に1人が睡眠に関する問題を抱えていると言われています。
不眠は日頃、外来で接することが最も多い症状のひとつです。
不眠の種類については様々なものがあり、現在使われている国際分類では細部までを含めると80項目以上になります。しかし、日常的に見られるのは、そのうちのせいぜい20から30項目くらいと思います。
最も多くみられるのが精神生理性不眠または神経質性不眠と言われるものです。典型的には寝つきの悪さや夜間に何度も目が覚めるといった症状で、中年期以降の女性に多く見られます。神経質、潔癖、健康に対する過度の不安などの特徴を持っている方が多いようです。不眠の弊害を過度に心配して、快適に眠るための工夫や努力をするため、逆に神経が高ぶってますます眠れなくなるという悪循環に陥っています。このような場合、正しい睡眠の知識や睡眠習慣について話し合う必要があります。場合によっては少量の睡眠薬も処方しますが、睡眠薬に対する恐怖感をもっておられる方も多くおられます。おそらくは昔によく使われた睡眠薬(バルビツール酸系剤)に対するイメージによるものと思われます。「睡眠薬を飲み始めると止められなくなり、服用量が増える。体にも悪い」といったものです。しかし現在使用される睡眠薬(ベンゾジアゼピン系など)には、そのような心配はほとんどありません。正しく使用すれば、依存性や体への負担という点では「酒を飲んで寝るよりもはるかに安全」と言えます。
不眠を主訴に来院される方であっても、うつ病や不安障害などと診断されることがあります。不眠はあらゆる精神疾患の症状として出現し得るものですし、脳器質性疾患や様々な身体疾患も合併することがあります。このような場合、睡眠薬のみの安易な使用はこれら疾患の悪化や遷延化を招くおそれがあります。先ずは正しい診断を受けることが大事と考えます。
上山病院 佐藤 晋一