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子どもの心の病気と精神科

近年、日本でも子どもの心の問題が注目されるようになっています。精神科を受診する子どもが、以前に比べると増えてきている印象があります。

しかし、子どもは大人を小型にした存在というだけではありません。それぞれの年代において、症状の現れ方はさまざまです。

精神科では、小学生から中学、高校生の年代を扱うことが多いのですが、小学生の年代とそれ以降のいわゆる思春期では身体や心の発達の違いがあり、それに伴って、症状にも違いがあります。

小学生、特に10歳頃までは子どもたちどうしの遊びが活発になるとはいえ、まだまだ、心身ともに親に依存している時期です。

自分の体験を心の中で整理して、言葉で表現する力は未熟です。

精神症状は、問題行動や身体症状となって出やすいのです。

たとえば、目をぱちぱちする、おねしょをする、身体の病気がないのに頭痛、腹痛を訴える、咳が止まらなかったり熱が出る、自分の髪の毛を抜く、元気がなくなって遊べなくなった、おちつきがない、しょっちゅう手を洗っている、おかあさんから離れるのを不安がるようになったなど多様です。

自閉症や注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害などの発達の障害が問題になって、精神科を受診するのも小学生年代くらいからが多いようです。

幼稚園や保育園では周りもゆとりを持って接することができても、学校となると状況が違ってくるからだと思われます。

発達障害は長く親の育て方がよくないせいだと言われていましたが、それは誤解です。その子の生まれつきの個性という言い方もできるものです。

学校で不適応を起こしている発達障害の子どもには、治療だけではなく、周囲の接し方、関わり方を相談していく必要があります。

子どもは、小学校高学年くらいから思春期といわれる年代に入ってきます。第二次性徴が始まり、女の子のほうが少し早く大人びてくるようです。女の子は自分の身体の変化に、男の子は自分の中の性の衝動にとまどいます。身体の変化と共に心も変化していきます。親から距離を取るようになり、自分自身を強く意識するようになります。他人から自分がどういう風に見られているかを気にするようになります。

親から見ると、急に無口になったり、常に苛々して見えたりします。自分の変化を受け入れ、どういう大人になるかということを模索していく時期なのです。

この過程が受け入れられないと思春期特有の不安や問題行動を起こすことがあります。

対人的緊張が強すぎて人の中に入れなくなったり、太りたくないと過度のダイエットに走って拒食症や食べては吐くを繰り返す過食症という状態になったり、親に対して暴力的になったりする子どももいます。

不登校は小学生にも見られますが、中学生になると出現率が高くなります。不登校が長期化してひきこもりと言われる状態になることもあります。

不登校にしろ、ひきこもりにしろ、それだけでは病気とは言えませんが、精神障害が隠れている場合があるので注意が必要です。

中学生くらいからは、統合失調症やうつ病などの病気が大人と同様の症状で発症することもあります。

ただ、特に中学生年代の子どもたちは、高校生以上の子どもに比べて、身体は大人と同じくらい大きくなっていても、まだまだ自分の内面の症状を言葉にすることに長けていません。この年代の子どもたちが難しいと言われる所以だと思います。

上山病院 渡部由里