山形さくら町病院/かみのやま病院 広報誌
病気や怪我で急に健康が失われた状態を医療用語では「急性期」といいます。急性期の医療では「診断をつける」「病気の進行を止める」「病気の回復が見込める目途をつける」ことが主な目標になります。早期発見、早期治療、とにかく“はじめが肝心”と言われています。
今秋、山形県でもドクターヘリが導入されることになりました。ドクターヘリに関して様々な効果が期待されていますが、一番は治療開始時間の短縮です。外傷、脳梗塞、心筋梗塞など様々な救急疾患では、治療開始までの時間が短ければ短いほど治療成績が良いことが知られています。しかし、病気や事故は都合よく病院の近くで起こってくれるわけではありません。医療過疎の問題もあります。ドクターヘリはこの「隙間」を埋める役割を果たし、現場まで素早く医療スタッフを運び、迅速に処置を開始します。搬送の間も途切れることなく治療を継続し、今までなら病院までたどり着くことさえできなかった重症の患者を救命することができるようになります。治療開始を早めることだけで運命を変えられる!かなりお得だと思いませんが?
糖尿病は、慢性疾患として精神疾患とよく比較対照されるのですが、この糖尿病の治療に関して「レガシー効果」というものがあります。大規模な長期研究の結果、早期に厳格な治療をした人たちは、最初の数年間こそ差は出ませんが、数十年後の合併症、死亡率は明らかに少ないことがわかりました。このことにより、糖尿病の早期発見、早期治療の有用性が一層注目されるようになりました。最初は目立たないけれど生真面目に治療をすると、まるで貯金をしたように安定につながるんです。
精神疾患も「はじめが肝心」であることが言うまでもありません。
精神病発症から受診にいたるまでの時間を精神病未治療期間(Duration of Untreated Psychosis:DUP)と言いますが、このDUPが長いほど治りにくくなり、再発しやすいという結果が様々な精神疾患で明らかになっています。また、発病後の最初の数年間は臨界期(Critical Period)と呼ばれ、この期間の安定がその後の病状を左右する重要な時間と言われています。つまり、早期発見し、中断することなく治療を継続し、安定した状態を保つことがとても大切なんですね。今後は、こういったことを背景に、訪問型支援(アウトリーチ)を核にした包括的な早期支援サービスの充実と、正確で迅速な情報を当事者や家族に提供していくことがより重要視されていきそうです。
急性期医療全体が変革していく時代の中で、取り残されている分野、地域が出てきています。病院数、ベッド数はそれなりにありながらも、質的な偏りのため医療過疎と何ら変わらない状況の地域も多くありますが、皆さんの周りではどうでしょうか?一度、真剣に考えてみることがおすすめします。