山形さくら町病院/かみのやま病院 広報誌
早いもので、雪の季節になりました。秋冬は気温が下がり過ごしやすくなる一方で、温度も下がるので皮膚にとっては乾燥との戦いです。そこで威力を発揮するのが保湿剤です。
パラパラとめくっていた専門誌の中に「保湿剤の迷信」というページがありました。それだけ誤解されているところもまだある薬なのかもしれません。今回は一緒に保湿剤について考えてみましょう。
保湿剤は、成人の方には皮膚欠乏性湿疹などに、小児の方にはアトピー性皮膚炎などに多く処方される塗り薬です。文字通り、皮膚に水分を取り込み、皮膚の乾燥やバリア機能の低下を補う作用のある薬です。
「保湿剤は、皮膚の外観をよくするだけで疾患に対する有効性はない」という意見がよく聞かれます。これはもちろん誤解です。
以下、①~③でその理由を書きます。
アトピー性皮膚炎(以下AD)の症状を軽快させる。ADは、乾燥などで皮膚の表面のバリア機能が障害されているので、保湿剤により皮膚症状はよくなります。ちなみに、このバリア機能の障害を保湿剤を塗らずに放置しておくと、AD以外にも喘息などの合併症が起きやすいのです。
ADの症状再発を防止する。
皮膚へのアレルゲン浸入予防に有効である。アレルゲンとは、ダニ、ハウスダストなどがよく知られていますね。これらが皮膚に浸入しようとするのを予防してくれるということです。
「保湿剤を使用すると、皮膚自体の保湿能力が落ちてしまう」という意見もあります。しかし、これを積極的に支持している研究結果は今のところありません。
ここまで読んでいただいて、保湿剤の優れた点をご理解いただけたでしょうか。
皮膚科で処方される塗り薬の多くはステロイド剤であって、その効果も副作用も良く話題になることと思います。その陰で保湿剤は話題の中心になることも少なかったかと思われますが、ここまで書いてきたように、保湿剤は決して「ついでに処方されるもの」ではありません。
ADのバリア機能の研究が注目されて以来、保湿剤に関する優れた研究は発表され続けています。
ちなみに現在、多く処方されている保湿剤は、「皮膚保護薬」として「ワセリン」が、「尿素製剤」として「ケラチナミン」「ウレパール」、「パスヌロン」が、「ヘパリン類似物質」として「ヒルドイド」があります。恐らく、どなたもが一度は耳にしたことのある名前ばかりではないでしょうか。これらをもし処方されることがありましたら、上手に有効に使いましょう。