山形さくら町病院/かみのやま病院 広報誌
今年の秋にもタバコは値上りします。それを契機に止めたいと思う方が多いようです。値上りが一番効果的なのは、中高校生などがタバコに手を出せにくくなることです。タバコの影響が一番大きいのは年齢が低い時に暴露されることで、そのつけが大きくなってから問題になります。
喫煙が今日ほど問題にされたのは、疫学的な解析により多くの疫病と関係が明らかにされたことが理由かと思われます。もし、喫煙が個人的なことに留まるのであれば自己責任で済みます。肺がんになることも慢性閉塞性肺疾患(COPD)にて在宅酸素をすることも理解して覚悟して吸うことであれば、問題にならなかったと思います。これだけ問題になったのは、受動喫煙です。環境の機密性が増してくる中で、喫煙する人よりも暴露される(さらされる)周りの人に何倍もの化学物質が影響します。これにより子供の喘息が増えたり、喫煙しないひとが肺がんになり易くなることです。寝タバコによる火災件数も馬鹿になりません。
国家的に考えますと、タバコ税による収益よりもタバコによると思われる疾病による医療費のほうが高くつきます。喫煙の害は単に発ガン性の問題だけでなく、生活習慣病のすべてに関して関係があると思います。禁煙することで糖尿病がよくなり、高血圧、動脈硬化も防げます。心筋梗塞、脳梗塞も確実に減らせます。禁煙するだけで、服薬する薬も減らせます。今後日本で死亡率が上昇することが確実な慢性閉塞性肺疾患(COPD)にならないで済みます。意外と知られていないことは歯の問題です。歯も歯肉もぼろぼろになり歯槽膿漏の大きな原因でもあります。両親が喫煙する家庭の子供の口を覗いて見てください。歯肉は黒ずんでいることがあります。妊婦さんの影響は大です。流産の可能性も高くなり、早産も多くなりさらに生まれた子供の成長に大きく影響します。知的な面での影響もでます。喫煙は女性の美容にとっても大敵です。高価な美顔のために投資するよりも禁煙するだけで皮膚が若返ります。試してみてください。喫煙は老化を促進します。
タバコをやめられない人は病気です。ニコチン依存症という立派な病気です。患者さんに一酸化炭素を測定し、一日の本数と吸った年月で基準を超えたら依存があると判定されますと保険が適応されます。ニコチンパッチの貼り薬とチャンピックスという内服できる錠剤が利用できます。昔は禁煙したくても楽には止められませんでした。今は楽に禁煙ができるようになりました。1年後に禁煙を維持できている成功率は60%ぐらいです。タバコに投資した費用は馬鹿になりませんし、タバコにより病気になって治療が必要になれば損失は計り知れません。COPDという病気は肺の構造が破壊されます。蜂の巣のようになることが多いです。禁煙する時期はどの年齢でもプラスに働きます。
たばこの効用を一服すると気持ちが落ち着き頭がすっきりするから吸うと愛煙家が言いますが、たばこを吸った後は実際の仕事の能力は確実に落ちています。たばこも健康被害がなくて楽しめるのであればよいのですが、分煙が認められるうちはよいですがそのうち禁煙法のような法律ができて取り締まられる運命になるかもしれません。私もクリニックでは禁煙指導に力を入れています。
べにばな内科クリニック院長 齋藤 博